ミネベアミツミ株式会社は、ミツミ電機の開発体制と、ミネベアの製造体制を融合し、開発・設計・製造・販売までの一貫体制を構築している。さらに、ミツミ電機の高度シミュレーション技術、CAE、アクチュエータ開発実績に、ミネベアの各種モーター開発・量産ノウハウを相合(そうごう)し、ミネベアミツミとしてレゾナントデバイスを開発した。

レゾナントデバイスは、触覚フィードバックという製品に力や振動、動きを与えることで「実際に物に触れているような感触」をフィードバックする技術に広く活用されており、様々なUIやHMIに豊かな触覚表現能力を提供することで、製品に新たなUXを創出することが可能である。また、レゾナントデバイスは振動を使って音を生み出すことで、Surface Soundとしての応用が期待されている。

レゾナントデバイスLVCシリーズ
・オーディオ信号で駆動可能
・応答速度が速い
・周波数帯域が広く、忠実で繊細な動作

レゾナントデバイスを触覚フィードバックに活用

レゾナントデバイス

レゾナントデバイスは触覚フィードバックを作り出す共振アクチュエータで、LRA(Linear Resonant Actuator)と呼ばれるボイスコイル(DDAを除く)の原理を応用した磁石とコイルから作られ、振動と音を生み出すこれまでにない発想の装置である。

豊かな触覚表現を実現するLVCシリーズ

LRAは機械共振を利用した振動を作り出すVCM(Voice Coil Motor)による電磁変換により、応答速度が速く、非常に豊かな触覚表現が可能である。LVCシリーズはダンパー付2枚ばね構造により「高次共振を押さえる」仕組みで、幅広い周波数帯で忠実で自然な振動を作り出す。


従来のERM(振動モーター)と比較してLVCシリーズは応答性がよく、狙ったときに狙った振動を伝えることができる。また、共振や電磁石を利用した振動により、1Gを超える強い振動を広い周波数の帯域で発生させることができるにもかかわらず、従来の回転型モーターでは実現できない繊細な動作によってリアルな触覚と静音を実現した。


LVCシリーズのCLF-25WXとERM同等品の性能は以下の通りである。

 

一般的な回転型振動モーターとの比較データ

従来の振動デバイスはあくまで通知方法の一つの役割になっていると思われるが、レゾナントデバイスの場合はただの振動だけではなくそこに色々なものの触覚の再現、さわり心地の再現といったものが可能になる。

さらに、レゾナントデバイスの振動とともに音を聴くことで、よりリアルな感覚が生まれるといわれている。将来的にはVRや視覚表現などその他の五感を補うようなものと組み合わせることによってアプリケーションが広がる。

 

触覚フィードバック

レゾナントデバイスによる多彩な振動は、リアルで臨場感のある「ざらざら、つるつる、重い、引っ張られる等」の触覚を生み出すことが可能である。例えば、水の入ったペットボトルを振る触覚、ボタンを押した感触、鉛筆のこすれる感触を再現することができる。さらに、振動は音源との連動も可能である。

 

このような触覚フィードバックは、スマートフォン、ウェアラブル機器、ゲーム機のコントローラー、自動車等に応用されている。

遠くの出来事を近くで体験

触覚フィードバックの応用例として、遠くにある水の入ったペットボトルを振ると、自分の手元にある空のペットボトルに水が入っているかのような感触を得ることができる。
水の入っているペットボトルに発生する振動加速度をセンサにて検出し、その振動をレゾナントデバイスでダイレクトに空のペットボトルに再現することで、ペットボトルを振っている感じや水が入っていて動いているような感じを触覚フィードバック表現することが可能である。

(クリックで動画再生)

レゾナントデバイスで様々なモノが音源になる

振動を使って音を生みだす

LVCシリーズはボイスコイルの原理を応用しているため、裏側から平面を振動させることで、Surface Soundとしてどこでも音を出す事ができる。また、レゾナントデバイスを面に直接あて、音を出すエキサイターとしても活用できるため、コンパクトでローコストのアラーム装置やスピーカー装置に応用が可能である。

 

Surface Soundは共振点(F0)が低いため、相対的に高音では音圧が下がる。そのため、必要に応じて高音用スピーカーを加えることでより忠実な音になる。また、スピーカーと比べると無指向性に近いため、広い範囲に音を拡散することができる。

製品情報

製品ラインナップ

レゾナントデバイスにはLRAとしてUSZシリーズ、LVCシリーズがある。USZシリーズは小型なスマートフォンやスマートウォッチ等のウェアラブルデバイスに、LVCはゲーム機やVR、ARに適している。

また、直動アクチュエータとしてDDAシリーズがある。 DDAシリーズは電磁石による磁気吸引とバネ反力の効率利用しており、ディスプレイ、パネル等の触覚フィードバックに特化し、応答速度が速いので、多彩な触感表現が可能である。

<レゾナントデバイスの特長>  
   ■ 低いF0値と強い振動
   ■ 早い応答速度(30msec以下)
   ■ オーディオ信号で駆動可能
■ 周波数制御が可能
■ 低消費電力
■ 駆動音が静か

LRA製品のデモと量産について

レゾナントデバイス本体を購入すれば、手持ちの音源、オーディオアンプで評価が可能で

評価デモ 量産イメージ
レゾナントデバイスのデモに必要なもの
・レゾナントデバイス本体(当社が販売)
・オーディオアンプ(市販の製品)
・イコライザー(不要な周波数をカットする場合)
・オーディオプレイヤー(mp3、PC等)
製品に組み込むもの
・レゾナントデバイス本体
・ドライバICまたはアンプIC
・通信IC
・イコライザ-
・制御ソフト 他

ミネベアミツミはレゾナントデバイス技術を応用した製品の開発を、構想段階から最適化に至るまで支援する。

     ●用途に合わせ製品を最適化

     ●特許技術で不要な共振を排除

     ●シミュレーションと連携して速く正確な設計が可能

まとめ

映像技術の向上により、アプリケーションを通して伝わる触覚にはよりリアルな表現が求められている。応答性が良く、人体が感知しやすい低周波領域での振動が可能なレゾナントデバイスは実物を手にしているような高い触覚再現が可能である。

また、回転型振動モーターでは表現しきれない繊細な駆動も実現し、スピーカーとしての利用や美容機器への搭載など、レゾナントデバイスの可能性は無限大である。

自社製品の改良や新しい技術を応用した製品の開発などに、ミネベアミツミレゾナントデバイスLVCシリーズが作り出す触覚(振動で触覚を再現)、聴覚(振動で音を生み出す)、駆動(振動でものを動かす)、小型(場所を選ばず振動を生み出す)を活用することで製品の可能性が広がる。なお、実装する製品にあわせて最適なデバイスサイズの選択が可能である。

 

ミネベアミツミは経験に裏付けされた高い技術力をもとに、製品の販売、用途に応じた設計のサポート、特許技術に関するコンサルティング等を提供しており、気軽に相談できる窓口を用意している。