キスラー

キスラー社 水晶圧電式センサによるひずみゲージ式ロードセルの課題解決

日本キスラーは、水晶圧電式の技術で世界をリードしているキスラー社(スイス)の日本法人である。キスラー社は長年にわたって製品研究開発へ多額の投資を行い、多くの革命的な技術開発を成し遂げ、あらゆる測定上の問題を世界に先駆けて解決してきた。

近年の自動車や半導体の分野では高い加工精度と高いサイクルタイムが要求されるが、従来のひずみゲージ式ロードセルではひずみ、劣化、組み込みが複雑という課題があった。キスラーが開発した水晶圧電式センサ(ロードワッシャ)は、高精度な加圧測定、高い応答性、高耐久、高寿命という水晶式ならではの特長があり、さらにコンパクトで組込みが簡単でメンテナンスフリーなため量産工程のスピード化と高品質化が期待される。

水晶圧電式センサ:ロードワッシャ
・剛性が高い
・感度が高く微小な荷重も検出
・測定範囲:7.5~1,200kN(全10機種)

ロードプレスの見える化ソリューション

リチウムイオンバッテリーの電極材のロールプレス工程の例
近年、自動車のBEV化が世界的に急速に進んでいる。いうまでもなくBEVはバッテリーのみで走る車なので、車の性能や車体の軽量化のためにバッテリーは重要である。ここでは代表的なリチウムイオンバッテリーの製造工程を例に、水晶圧電式センサの特長を紹介する。
以下はリチウムイオンバッテリーの製造工程だが、その中で電極材のロールプレス工程に着目する。


ロールプレス工程では、電極材を圧縮、圧延、高密度化して、組立工程で積層することで大きなバッテリー容量を得ることができる。 その際、ロールプレス工程での1枚数ミクロンのバラツキでも、電極材を積層することでバッテリー容量が大きなバラツキとなってしまうため、高度な板厚精度が求められる。そのため、プレス時の圧力をモニタリングするために、ロールの左右に各1個のひずみゲージ式ロードセルが装備される。ところが、ひずみゲージ式ロードセルにはひずむ、劣化する、組込みが複雑という大きな課題がある。


ひずみゲージ式ロードセルはひずみによる誤差が大きい→水晶圧電式センサは剛性が高くひずみが小さい
ひずみゲージ式ロードセルは、荷重によりセルが生じたひずみを電気信号に変換するが、想定以上のひずみ量により製品の寸法管理に影響が生じる。キスラーの水晶圧電式センサは、荷重に応じた電荷を電気信号に変換するため、水晶の剛性が高くひずみにくいため、正確な測定データによりフィードバック制御が安定して、製品の品質向上や高価な材料のロス削減に貢献する。

例えば電極の板厚を100μmにしたい場合、ひずみゲージ式ロードセルは300kN負荷した時、セル自身がおおよそ210μmひずんでしまうため板厚制御が安定しない。キスラーの水晶圧電式センサに300kN負荷した時のひずみ量は12μmとなり、ひずみゲージ式ロードセルの1/17である。


ひずみゲージ式ロードセルは劣化する→水晶圧電式センサは劣化しない
ひずみゲージ式ロードセルには半球形状のロードボタンがあり、パンチプレートを介して負荷がかかる構造である。繰り返し押すことによるロードボタンの摩耗劣化や、摩耗によりセンサ高が日々変わることで板厚制御に対する誤差要因となる。また、ロードボタンは衝撃に弱いためセンサが壊れてしまい、点検や交換のためにラインが停止してしまうことがある。

キスラーの水晶圧電式センサには突起がなく、センサを平面で受けるため、上下の治具と密着して隙間がなく微小変化の測定が可能である。また、水晶は劣化しにくく長期的に安定した出力が得られるため、メンテナンス時間やコストの削減に貢献する。


ひずみゲージ式ロードセルは組立が複雑→水晶圧電式センサはコンパクトで周辺部品が少ない
ひずみゲージ式ロードセルを組込む際には、パンチプレートを介してロードボタンを垂直に押すため左右にガイドが必要である。
また、センサ設置面やパンチプレートにも加工精度が必要なためコストアップとなる。さらに、部品点数が多く組込みが複雑なため、初期調整だけでなく日々の調整やメンテンスが必要になる。

キスラーの水晶圧電式センサは治具の上板と下板の中間に設置して、ボルトとナットでしっかりと固定するため隙間がなく微小荷重の検出が可能である。センサのサイズが小さく周辺部品が少ないため、長期のメンテナンスが不要でコストが削減できる。


キスラーの水晶圧電式センサの体積はひずみゲージ式ロードセルに対して1/4~1/3で、重量は1/35である。

以上のキスラーの水晶圧電式センサを活用したロールプレス工程の見える化ソリューションにより、ひずみゲージ式ロードセルの課題を克服して品質向上、材料ロスの削減、メンテナンス費の削減を図ることが可能である。

ラインナップとアプリケーション

水晶圧電式センサ(ロードワッシャー)
キスラーは様々な水晶圧電式センサを揃えているが、代表的なシリーズを紹介する。水晶圧電式力センサ(ロードワッシャー)は、Z方向にかかる1成分の動的及び準静的な圧縮力を高精度に測定できるのが特長になる。

特長
■ 測定範囲:7.5~1,200kN(引張/圧縮)
■ 2つの測定範囲(100%、10%)
■ 用途に応じて10機種から選択
■ 直線性が高い
■ 微小分解能が高い
■ 応答速度が速い
■ 非常に高い動的分解能
■ コンパクト
■ 高耐環境性
■ 高剛性
■ 長寿命(経年劣化無、耐用年数の制限無) 

周辺機器
水晶圧電式力センサ(ロードワッシャー)には、用途に応じたチャージアンプと、センサとチャージアンプを接続するケーブルが用意されている。アプリケーションに応じて最適な組み合わせが可能である。

アプリケーション例
水晶圧電式力センサ(ロードワッシャー)は高剛性で測定値の再現性に優れていて、経年変化がほとんどないため長寿命である。但し、非常に長い時間の純粋な静的測定には向いていないが、様々な量産製造工程における力計測に適している。

アプリケーション
■ プレス工程における荷重測定
■ パンチング工程におけるエラー荷重測定
■ 半導体のワイヤボンディングの接合監視
■ 絞り加工の荷重測定による監視
■ スポット溶接時の電極間の加圧力の測定
■ 樹脂成形の型内圧測定による成形品質管理
■ ねじ締結時の軸力測定
■ 切削抵抗測定
■ ブレーキ力測定
■ 製品落下時の衝撃力測定

まとめ

キスラーの水晶圧電式センサを活用したロールプレス工程の見える化ソリューションは応用の1例である。さらに、自動車、各種エンジン、半導体、医療分野への応用で、高感度の工程監視能力アップ、組込みの簡素化・小型化やサイクルタイムアップ、メンテンスフリーが実現できる。他にも、ひずみゲージ式ロードセルでは実現できない性能により、広い分野の製造工程で品質向上や材料ロスの低減、設備の状態監視による不良の是正やメンテナンス費の削減などが期待できる。

日本キスラーは経験に裏付けされた高い技術力をもとに、製品、および関連機器の販売、技術サポート、開発サービス、システムの試運転時のサポート、プロセスの最適化、センサの定期的な現場校正、品質管理サービス、コンサルティングを提供している。

関連情報

  ロードワッシャ9001Cシリーズ(PDF)
  プレスフォースセンサ9323Aシリーズ(PDF)
  工業用チャージアンプ5073A(PDF) 
  力(荷重)センサカタログ(PDF)
  キスラー ウェブサイト