パナソニック:車載用基板対FPC直接接続コネクタ

パナソニック インダストリー株式会社(以下パナソニック)は、車載向けFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブルプリント配線板)の需要増加の見込みから、業界初となる独自構造を用いた車載用基板対FPCコネクタを開発し、その展開に注力している。

近年、小型軽量化、配線の省スペースのために車載へのFPC採用が進んでおり、特にBMS(バッテリマネジメントシステム)での増加が著しい。一方、FPC使用時の制御基板との接続においては、民生用途FPCコネクタの接続信頼性懸念や、既存の車載用途コネクタを用いた中継ワイヤーハーネスによる部品数や重量の増加、作業の煩雑さなど、いくつかの課題が指摘されている。

パナソニックは、これらの課題解決とさらなる車載FPCの増加に向け、独自構造のFPCと基板を直接接続する車載用基板対FPCコネクタ、「CF1」および「CF2」を開発した。これらは中継ワイヤーハーネスを不要にし、作業性を向上させつつ車載用に要求される高い信頼性が確保されている点に注目が集まっている。

パナソニック独自の構造によりFPCと基板を直接接続。
FPCにリフロー実装したプラグと基板側レセプタクルを嵌合する。

車載用基板対FPC直接接続コネクタ:開発の狙いと用途

車のDRL(デイライト)やテールランプなどは、斬新なデザインを実現するためにFPCの使用が増えており、車室内のイルミ―ネーションやクラスターパネルなども同様の傾向にある。現在、FPCと車両側の電源・制御基板を接続する場合、中継ワイヤーハーネスを用いる方法が主流となっているが、ワイヤーハーネスの重量増加や組み立てにおける作業性の悪さが課題として挙げられている。

パナソニックはこれらの課題に対して、FPCにプラグを実装して、基板側に実装したレセプタクルと直接接続する独自構造の基板対FPCコネクタを開発した。このコネクタを使用することで、中継ワイヤーハーネスが不要となり部品点数と作業工数の削減が可能になる。また、FPCを直接接点としない両側金属接点による接続構造により高い接続信頼を確保し、FPC側プラグと基板側レセプタクルを嵌合するだけで簡単にFPCと基板を接続でき作業性も向上する。

用途としては、DRL(デイライト)やテールランプ、クラスターパネル内などのFPCと車両側基板の接続はもちろん、現状ニーズが高い用途として、BMS(Battery Management System:バッテリマネジメントシステム)が挙げられている。下図は、BMSにおけるFPCニーズのイメージと、パナソニックの基板対FPC直接接続コネクタ使用のメリットを示したものである。

電動車の市場投入が進む中、搭載するバッテリモジュール数は増加の傾向にある。ワイヤーによるバッテリモジュールと制御基板の接続では、ワイヤーが増えワイヤーハーネスの重量は増加し、必要とするスペースも増える。 ワイヤーの代わりにFPCを使用すると煩雑さと重量は大幅に軽減される。 しかしながら、既存のFPCと基板との接続に中継用ワイヤーハーネスを用いる方法では、レセプタクルとプラグが2セットとその間のワイヤーを要する。これに対して、パナソニックの基板対FPCコネクタを使用すると中継用ワイヤーハーネスが不要となり、非常にスマートな配線を実現できる。

以上、主要な使用例として車載用途を示したが、これらのコネクタは車載同様に厳しい環境下で使用され、小型軽量化が重要課題となるドローンやロボットなどの機器にも非常に適したコンセプトのコネクタで、使用分野やアプリケーションの広がりが期待されている。

車載用基板対FPC直接接続コネクタ:特長とメリット

基板対FPCコネクタ CF1およびCF2の特長とメリットを示す。端的には前述の通り、従来のワイヤーハーネスによる中継方式から、これらの直接接続方式コネクタに置き換えることで、車載用としての十分な信頼性を確保しつつ、中継ワイヤーハーネス不要、コネクタ数減、コネクタ嵌合工数減といったメリットが得られる。以下の図にポイントとなる特長を示す。

基板対FPC直接接続
FPCと基板を、FPCを接点とせずに直接接続できる金属端子接続構造によって、中継ワイヤーハーネスが不要となり、部品点数と嵌合工数を削減できる。

プラグアセンブリ:リフロー実装
プラグは、FPCにリフローはんだによって実装するパナソニックの独自構造である。これはFPCに実装する他の部品の実装時に同時に行うことが可能で、組み立て工数の削減はもちろん、自動実装が可能になる点が大きなメリットとなる。

接点構造:2点挟み込み接点
2点挟み込み接点構造により優れた耐振動性を実現し、車載用途に要求される高い接触信頼性を確保。

他方式の基板対FPC直接接続コネクタとの比較

パナソニックの基板対FPC直接接続コネクタと、他の中継ワイヤーハーネスを使用しない接続方式との比較を示す。現在、FPCと基板を中継ワイヤーハーネスを使用せずに接続する主な方式として、クリンプ方式とFPC接点方式が存在する。下図はそれぞれの特徴をまとめたものである。

パナソニック 他方式
コネクタ構造 実装タイプ クリンプタイプ FPC接点タイプ
接点 金属:2点挟み込み接点 金属:FPCと端子をカシメる FPC:直接FPCをレセプタクルに挿入
プラグ
アセンブリ
・リフローはんだ自動実装
・FPC上の他の部品と同時に実装
・専用カシメ設備
・複数の工程、一部手作業
(FPC接点部に金メッキ必要)

パナソニックのCF1およびCF2は、すでに説明してきたように、コネクタ構造はFPCにプラグを実装するタイプで、接点は金属の2点挟み込み接点、プラグアセンブリはリフローはんだ自動実装が可能で、FPC上の他の部品と同時に実装可能である。

クリンプタイプは、FPCに金属端子を直接機械的にカシメてプラグと接続し、基板のレセプタクルと嵌合する方式である。カシメには専用設備が必要で、FPCを貫通させて端子を直接カシメておりカシメ部分の腐食が懸念される。また、カシメ工程をはじめFPC側コネクタのアセンブリに複数の工程があり一部手作業も含む。

FPC接点タイプは、FPCの端(接点部)を直接基板側レセプタクルに挿入するタイプで、民生用小型機器によくみられる方式である。図にあるように接触部が振動摩耗に弱く、車載用とするには信頼性に劣る。また、FPC接点部には一般に金メッキを施す必要がある。

この比較において、パナソニックのCF1およびCF2は、シンプルなプラグアセンブリ、信頼性の高い金属端子同士の2点挟み込み接点など、その優位性が高いことがわかる。

車載用基板対FPCコネクタ CF1 / CF2:製品仕様概要

以下に、車載用基板対FPCコネクタ CF1とCF2の仕様概要を示す。詳細は、末尾にある「関連情報」からデータシートなどで確認いただきたい。

⾞載⽤途に求められる耐振動性、耐熱性(125℃)を確保
中継ワイヤーハーネスが不要なFPCと基板の直接接続
2点挟み込み接点構造により接触信頼性を確保
嵌合ロック誤操作防⽌ガード(CF1)
慣性ロック構造により半嵌合を防⽌(CF1、2/4/6芯)
多芯化ニーズに対応(CF2)

項目 内容
接点構造 オス/メス 両側金属接点
プラグ結線方法 表面実装(はんだ付け)
芯数 CF1:2、4、6、8、10(1列)
CF2:16、20、24、28、32(2列)
端子ピッチ CF1:2.2mm
CF2:1.0mm
定格電流
※FPC部除く
CF1:Max. 2.0A/pin
CF2:Max. 1.0A/pin
耐電圧 CF1:AC1000V、1分間
CF2:AC800V、1分間
絶縁距離 ※BMS用途
IEC60664要求のLi-ionセル電圧における
要求仕様を満足
使用温度範囲 -40℃~125℃
※通電時の温度上昇含む
端子材料 銅合金 / Ni下地Snメッキ
成形材料
(難燃性グレード)
LCP(UL 94V-0)
芯数 2 4 6 8 10
X寸法 15.4 19.8 24.2 28.6 33.0
芯数 16 20 24 28 32
Y寸法 25.8 29.8 33.8 37.8 41.8
Z寸法 27.2 31.2 35.2 39.2 43.2

まとめ

パナソニックの車載用基板対FPC直接接続コネクタ CF1およびCF2は、FPCに実装したプラグと基板側のレセプタクルを、金属の2点挟み込み接点により直接接続する独自構造で、中継ワイヤーハーネスを使用する一般的な従来方式から中継ワイヤーハーネスを不要にし、嵌合工数も削減する。また、他方式のFPC直接接続コネクタに対して、プラグアセンブリの自動化と大幅な工数削減ができ、FPCの直接接続にも関わらず金属接点による高信頼性の確保が大きな優位性となっている。今後の車載FPCの増加、BMSへの展開などを含めて、基板対FPC接続のソリューションとしての期待が大きい。

またパナソニックでは、車載用途に限らず、高機能で小型軽量化が求められ厳しい環境条件で使用される部品や機器への展開も視野に入れており、多様なアプリケーションにおいて多くのユーザーメリットを提供して行く。

関連情報

  車載用基板対FPC直接接続コネクタ:CF1 製品情報ページ(ラインアップ、データシート、CADデータ他)
  車載用基板対FPC直接接続コネクタ:CF2 製品情報ページ(ラインアップ、データシート、CADデータ他)
  車載用基板対FPC直接接続コネクタ動画解説(YouTube)
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