キスラー(Kistler Group:本社スイス、日本法人:日本キスラー株式会社)は、1959年の創業以来、圧力、力、トルク、加速度を測定する動的計測技術の世界的リーディングカンパニーで、特に計測システムのコアとなる圧電式センサ技術は広く知られるところである。加えて、これらの技術を活用した電動サーボプレスシステムの開発にも取り組んでおり、自動車産業を始めとした産業オートメーション市場を中心に数多くの実績を持ち、小型電動サーボプレスでは世界トップクラスの販売シェアを誇る。 | |
先ごろ発売されたサーボプレスシステムの新製品「NCFE」は、操作が簡単で導入しやすく、コストパフォーマンスを重視したエントリーモデルである。キスラーでは早期にIndustry 4.0や産業IoTへの対応を行っており、NCFEはエントリーモデルと言いながら、自動車製造業などの組立・圧入工程では標準的な要求となりつつある荷重モニタリング、データ取得、合否判定などに対応する。 | キスラーのサーボプレスシステムのイメージ |
キスラーは、日本の自動車産業界に対しても世界的に実績の高いサーボプレスシステムの導入を推進しており、特に新設が進むEV系生産ラインの組立・圧入工程に向けて積極的な展開を図っている。 |
NCFEは、新規にキスラーのサーボプレスシステムを導入する生産ラインやユーザーに向けたエントリーモデルと位置づけられ、操作が簡単で導入しやすく、コストパフォーマンスを重視した新製品である。 | |||||||||||
歪ゲージ式ロードセルを組み込んだサーボプレスシステムで、10〜80kNまでの定格荷重に対応し、荷重と変位量によって作業をモニタする。圧入工程の使用に適し、特に油圧システムの置き換えに最適なシステムとなっている。 | |||||||||||
<特長>
以下に個々の特長を説明する。 |
サーボプレスシステムNCFE 本体 |
NCFEにサーボプレスシステムという呼称が使われているのは、システム構築に必要なサーボドライブ、コントローラーユニット、そしてケーブル類がセットとなっている点にある。一般には、サーボプレス本体を選択して、システムに必要な周辺装置をオプションとして揃えることになるが、NCFEは定格荷重を指定するだけで一式が揃うので、導入の煩わしさが少なく、システムとして十分な機能一式を含んているので利便性が高い。 | |
サーボプレス本体に歪ゲージ式ロードセルを内蔵しており、10〜80kNまでの定格荷重に対応する。 |
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サーボアンプが制御を行うACサーボモータで駆動され、一定の回転速度によって一定の運動速度が保証される。また、アブソリュートエンコーダーが内蔵されているので、原点復帰運転は不要で正確な位置決めが可能。 | |||||||||||||||||||
ブロック加圧、ポジション加圧、フィードバック加圧、中間ポジションなどの標準機能がサポートされている。 | |||||||||||||||||||
構成図が示すように、NCFEサーボプレスシステムは基本的にNCFE本体、IndraDrive Csサーボドライブ、maXYmos NCコントローラーで動作し、ディスプレイは必要に応じて選定すればよい。サーボドライブとコントローラー間の通信は、SERCOS IIIを介してリアルタイムで行われ、コントローラーユニットはPROFIBUS、PROFINET、EtherNet/IP、EtherCATといった主要インターフェースを標準装備している。 |
ドイツのIndustry 4.0や世界的な産業IoTの展開によって、特に自動車産業のように厳しい品質が要求される工場では、プレスの荷重モニタリングやデータの取得から合否判定といった自律性を備えることが求められている。NCFEサーボプレスシステムは、これらに対応する機能やソフトウェアを標準で搭載している。以下に、主な機能をまとめた。 |
キスラーはヨーロッパを中心に、世界58カ国に現地法人を展開している。日本には、日本法人の日本キスラー株式会社(横浜本社およびテクニカルセンター)があり、中部、埼玉、関西の3箇所に拠点を構える。システム導入に関してはメーカーのサポートが重要な要件になるが、日本にはテクニカルセンターが設置されている。テクニカルセンターは全世界で、日本、米国、中国、インド、EU(7箇所)の11箇所。日本での技術サポートは、基本的に日本キスラーから直接提供される。 |
キスラーでは、新製品のNCFEの他に、5機種のサーボプレスシステムを用意している。既存の機種はパワートレーン工程などの、より正確で高い気密保持を要求される圧入やアプリケーションに向けられている。 |
システム/型式 | 加圧測定範囲 (kN) |
最大送り速度 (mm/s) |
ストローク (mm) |
特徴 |
NCFE / 2162A… | 10~80 | 250 | 350 | 簡単操作で導入しやすく、コストパフォーマンスを重視したエントリーモデル。 |
NCFT / 2157B… | 0.05~1.5 | 400 | 100 | 低圧力の接合工程用。小型のプレスで高精度制御工程に最適。 |
NCFH / 2151B… | 1~60 | 300 | 200~400 | 中空軸サーボモータ内蔵のコンパクト設計。最も人気のあるトップセラーモデル。 |
NCFS / 2152B… | 15~25 | 350 | 350 | 中心間距離の狭い製造ライン向け。バルブガイド/シートの組立工程用の省スペースモデル。 |
NCFN / 2153A… | 5~600 | 100~250 | 200~400 | 中~強圧力の接合工程用。最大600kN(60t)にまで対応した大容量タイプ。 |
NCFR / 2161A… | 5~15 | 400 | 400 | 組立および接合工程監視用。圧縮、引張のみでなく、回転にも対応した新型サーボプレス。 |
近年のプレスシステムは、電動サーボプレスシステムの台頭が著しい。これは、油圧式および空圧式プレスシステムと比べ大幅にエネルギー効率を改善できることや、騒音や汚染などの環境課題への対応に加え、Industry 4.0の末端機器への自律性要求や産業IoTへの対応も理由になっている。 |
キスラーはヨーロッパを起点とする世界展開の一環として、早くから高性能で自律性を備えたサーボプレスシステムの開発に取り組んでおり、既存品から今回の新製品NCFEに至るまで、同様のコンセプトに基づくラインアップを展開している。 |
日本においても同様の要求が高まっており、エントリーモデルとなるNCFEの高いコストパフォーマンスをもって、特に自動車産業、さらには今後新設が増加するEV系の組立、圧入工程に向けての展開を推進して行く。 |