MaximのMicro PLCプラットフォームとリファレンスデザイン

Maxim Integratedは、産業用途に向けた様々なICと、そのまま利用できるリファレンスデザインの開発を推進している。2014年11月にドイツ・ミュンヘンで開催された国際見本市electronicaでは、Industry 4.0に向けたMaximのリファレンスデザインであるMicro PLC I/Oモジュールにより構築された、業界最小のPLCコントローラに多くの注目が集まった。
MaximのMicro PLCプラットフォーム
Industry 4.0に向けた、超小型PLC I/Oモジュール
現在Maximは、Micro PLCプラットフォームとして、6種類のI/Oモジュールとリファレンスデザインを提供している。本稿ではその中からデジタルアウトプットモジュールと、その中核を成す8ch 高速ハイサイドスイッチICであるMAX14900Eをピックアップし、Maximが提案するIndustry 4.0に向けたソリューションを確認する。
 *Maxim社調べ
(取材:高橋 和渡/f プロジェクト・コンサルティング)

Industry 4.0とPLC

Industry 4.0は、ドイツ政府が推進する産官学一体のプロジェクトである。第4次産業革命とも呼ばれ、18世紀終わりに起きた機械化を象徴する第1次産業革命、19世紀後半の大量生産が発展した第2次産業革命、20世紀後半のPLC(Programable Logic Controller)に代表される自動化やネットワーク制御が台頭した第3次産業革命に続く産業革命という位置付けである。
その概要は、分散型や自律型の制御システムを発展させ、生産工程のみならず広くICT(Information and Communication Technology)を活用するスマートファクトリーである。スマート化がもつ意味は、製造をより賢く効率的にし、保守保全コストの低減と生産性の向上を実現する。
PLCは今日の自動化やネットワーク制御の中心的な存在である。しかしながら、Industry 4.0においては、大型で中央集中化された従来の形態から分散設置型への移行が必要になり、そのためには、設定の自由度が高くコンパクトなモジュール型が有望になる。同時に多くのセンサーを備え大量の情報を処理するために、I/Oの増加、処理の高速化、稼働率の向上が要求される。
つまり、現状のPLCには、Industry 4.0に向けて大きな変革が必要になると予想される。
Industry 4.0の要求 PLCの対応
分散化設置 ハードウェアの小型化
設定の自由度向上 モジュール化
小型化、省電力化 I/O密度増加、高効率化 
高速処理、高稼働率 高速化、堅牢性向上、診断機能、センサー増強

MaximのIndustry 4.0ソリューション:Micro PLCプラットフォーム

前述の通り、PLCには大きな変革が必要になる。それに対してMaximは独自のMicro PLCテクノロジーのプラットフォームを開発した。そのコンセプトは、小型、低消費電力、少ない部品点数、低コストをベースにIndustry 4.0の要求に対応できるように設計されたリファレンスデザインとそのモジュールにより、設計者が迅速かつ簡単にIndustry 4.0に向けたPLCを開発できることだ。
各リファレンスデザインとそのモジュールは、スタンドアロンのサブシステムとして動作させることも可能で、PCのUSBポートを使って設定やテストを容易に行うことができる汎用性と柔軟性を備えている。設計者はこのリファレンスデザインまたはモジュールを使って簡単に自身の設計機器とともに評価することができ、場合によってはリファレンスデザインをそのまま利用することも可能である。
写真はelectronicaで展示した業界最小のPLCである。CPU/PCUモジュールと6種類のI/Oモジュールで構成されており、そのサイズは95mm×70mm×57mmであり、既存の同等機能のものに比べて1/10の大きさである。また、電力消費は1/2、デジタルI/Oは70倍の処理速度を達成している。
       
MaximのMicro PLCプラットフォームとモジュールのサイズと内訳
95mm×70mm×57mmのまさに手のひらサイズで、CPUモジュール+6種のI/Oモジュールを搭載する。
表で示したIndustry 4.0に向けた対応に照らし合わせていただければ、このMicro PLCプラットフォームは非常に的を射たソリューションであることがわかる。

PLCの小型化、省電力化、高性能化はアナログのインテグレーションが鍵

従来のPLCモジュールのスペースの85%は、アナログ部品とディスクリート部品が占めているという。つまり、PLCモジュールの小型化、省電力化、高性能化は、アナログ部品とディスクリート部品のインテグレーション(集積化)が大きな鍵となる。
ここで、Micro PLCプラットフォームを構成するモジュールの一つである、高速デジタルアウトプットモジュール/リファレンスデザインMAXREFDES63#を例に取る。
MAXREFDES63#は、8chのデジタルアウトプットモジュールで、8ch(オクタル)のハイサイドスイッチ(MAX14900E)、600VRMSデジタルアイソレータ(MAX14850)、MCUのSTM32F1、FTDI USB-UARTブリッジ、必要な電源を生成する降圧DC/DCコンバータ(MAX17515)とフライバックコンバータ(MAX17498C)が搭載されている。
リファレンスデザインMAXREFDES63#
8chのデジタルアウトプットモジュール機能ブロック
(クリックで拡大)
リファレンスデザインMAXREFDES63# 評価モジュール
基板サイズは、2.25"(57mm)×2.75"(70mm)
U400が7mm×7mmのMAX14900(クリックで拡大)
このモジュールの機能の中核を成すのは、MAX14900Eである。MAX14900Eは、業界トップクラスの高速性を実現したハイサイドスイッチで、現状では同等の性能とインテグレーションを達成したICはないという。近似の機能を実現するICとディスクリートの組み合わせなどと比較すると、大きな改善がなされている。
MAX14900Eの特長
◆システムスピード、スループットを10倍以上高速化可能
高速な伝播遅延: ハイサイドモード2μs (max)
プッシュプルモード0.8μs (max)
負荷の高速放電が可能なプッシュプルモード
プッシュプルモードでのスイッチングは最大100kHz

 MAX14900E 8ch ハイサイドスイッチ
 ハイパワーで低オン抵抗のハイサイド/プッシュプル
 モードスイッチを内蔵(クリックで拡大)
◆消費電力と発熱を20%に削減
超低オン抵抗:85mΩ (typ)、165mΩ (max)
低消費電流:1.5mA (max)
◆実装面積を40%に削減
ディジーチェーン可能なSPI I/Fによりアイソレータ数を削減
小型7mm×7mmの48ピンQFNパッケージ
◆システムメンテナンスを簡単にして稼働時間を向上
全体および個別チャネル診断機能
負荷解放、断線検出機能
スイッチはハイサイドと称しているが、実際はプッシュプル構成になっており、負荷の放電など用途は広い。また、これらのスイッチの電流制限はハイサイドモードで1.7A (typ)、プッシュプルモードでは500mA (typ)と高い能力を備えている。MOSFETのオン抵抗は素子サイズとのトレードオフなので、7mm×7mmの小型パッケージに収まるチップに集積された8個+8個のMOSFETのオン抵抗としては、非常に低く抑えられている。個別MOSFETではさらに低いものがあるが、TO-220クラスのパッケージを16個並べるのは、この基板サイズでは非現実的であるのは言うまでもない。
この様に、MAX14900Eは既存のソリューションに対して、インテグレーションをもって小型化、省電力化、高性能化に大きく貢献していることがわかる。

まとめ

MaximのMicro PLCプラットフォームは、Industry 4.0に対してPLCに必要とされる変革を強力にサポートするソリューションである。分散化、設定の自由度向上、小型化、省電力化、高速処理、高稼働率をいったIndustry 4.0の要件を満たす鍵となるのは、アナログのインテグレーションであるという観点から、Maximは設立当初から培ってきた高性能アナログの技術とノウハウを投入したICを開発し、さらにリファレンスデザインにまで発展させている。
近年、Maximは産業市場向け製品とサポートの強化を掲げており、業界に先駆けてIndustry 4.0という産業界の変革に向けた具体的なソリューションを提供している。これは、Industry 4.0への対応を迫られているPLC関連の設計者には朗報であるといえる。

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