Maxim Integratedは、お客様の製品設計を迅速かつ確実にするソリューションとして、最終製品にそのまま利用できるレベルの高品位なリファレンスデザインを提供している。回路図はもちろん、基板レイアウト、ソフトウェア、試験データ、評価ボードなど設計に必要な情報を一つのパッケージとして用意しているのは以前紹介した通りで、お客様からは好評を得ているという。 | |
先般Maximは、16ビット高精度マルチ入力絶縁型アナログフロントエンド(AFE)のリファレンスデザインであるSanta Fe(サンタフェ)を、PCにUSB接続するだけで簡単に評価できるEasy AFE評価キット(正式品番:MAXSANTAFEEVSYS)を発表した。Maximはこのキット化により、リファレンスデザインの評価を今まで以上に簡単かつ迅速にして、お客様のtime-to-marketの短縮と利便性の向上を図るとしている。 | |
本稿では、リファレンスデザインSanta Feと、その評価キットの内容を確認する。 | |
(取材:高橋 和渡/f プロジェクト・コンサルティング) |
Maximのリファレンスデザインは、「最終製品にそのまま利用できるソリューション」という位置付けがなされており、産業機器の専門知識を持ちICを熟知した人員を集結した専門部署で開発されている。高品位なリファレンスデザインとともに、部品表、基板レイアウト、Gerberファイル、CADデータ、ファームウェア、試験データが無償提供されており、評価ボード(有償)も用意されている。また、デザインの呼称には、今回のSanta Feもそうであるが、主に米国西海岸の地名を与えているのが特徴的である。 |
リファレンスデザインを利用するメリットは、設計者にとって大きな課題であるtime-to-marketの短縮とコスト削減が可能になる点である。現代の設計者は、省電力化、小型化、時間短縮、コスト削減といった様々な制約を抱えながら、常に刷新を求められている。この状況において、ICや関連部品の最新動向や機能を調査し、評価を行い部品を選定するといった従来の手順を踏むことが難しくなっている。 | |
従って、設計者が必要としているのは、部品情報だけではなく設計課題を解決できるソリューションであり、その点においてMaximのリファレンスデザインは設計者のニーズに基づくもので、実際に貢献度が高い。 | |
しかしながら、たとえMaximの「最終製品にそのまま利用できるソリューション」であっても、何の評価もなしに回路設計に組み入れることはありえない。如何なるリファレンスデザインであっても現物の動作特性評価は必須であり、通常は評価ボードや測定機を用意して試験を実施する。 |
最初に、Santa Fe自体がどのようなリファレンスデザインであるかを確認して、次いで評価キットの機能や利便性を確認する。 | |
リファレンスデザインSanta Fe(MAXREFDES5#) Santa Feは、サブシステムとしての16ビット高精度マルチ入力絶縁型アナログフロントエンドのリファレンスデザインで、正式な品番としてはMAXREFDES5#になる。ブロック図を見ていただくとわかるように産業制御、産業計測の典型的な絶縁型±アナログ入力インタフェースで、14ビット以上の高精度を実現している。Pmod™インタフェースによりXilinx社製のデバイスを搭載したNexys™ 3およびZedBoard™プラットフォームに直接接続することが可能である。主な特長と仕様を以下に示す。詳細に関しては末尾の関連資料のリンクで確認いただきたい。 |
MAX1301: シリアル16ビット4ch逐次比較型ADC。5V単一電源で最大+12.288V~‐12.288V(VREF 4.096V×±3)を入力可能なマルチレンジ入力を備え、±16.5Vを許容。AIN1(‐10V~+10V)とAIN3(0~+10V)は入力抵抗17kΩ端子に直接入力。 |
MAX9632: 36V(±18V)電源、高精度、低ノイズ、広帯域オペアンプ。AIN0の‐10V~+10V入力電圧用ローノイズハイインピーダンスバッファおよびAIN3の4~20mA入力電流用ローノイズハイインピーダンスアナログバッファ。 |
MAX6126: 超高精度、超低ノイズ電圧リファレンス。ADCは4.096Vの電圧リファレンスを内蔵しているが、より高い精度を得るために、初期精度0.02%、最大温度係数3ppm/℃の外部電圧リファレンスを使用。 |
MAX14850: 600VRMSデジタルデータアイソレータ。データラインの絶縁用。 |
MAX256: 絶縁電源用1次側Hブリッジドライバ。3.3Vレールからトランスを伴って2次側に絶縁出力を供給。 |
MAX1659: LDOレギュレータ。ポストレギュレータとして、2次側に供給された絶縁電圧からオペアンプ用の±12VとADC、VREF、アイソレータ用の+5Vを生成。 |
付属のソフトウェアをインストールし、各ボードをUSBポートに接続するとすぐに動作を開始する。信号発生ボード用のソフトウェアを操作することで、DC電圧、ランプ波形、正弦波、ステップ波形など、実機のセンサ出力を模擬した信号を簡単に出力することができる。また、Santa Feボードはそれを即座に測定し、USB-Pmod変換アダプタボードを介してPCにデータを送り、測定データが表示される仕組みだ。 | |
付属するGUIソフトウェアはシンプルで直感的なのですぐに操作可能だ。どれほど簡単で迅速にできるのかは、すでにイメージ可能かと思うが、非常にわかりやすいビデオ資料が提供されているので、是非ともご覧いただきたい。 | |
信号発生器のGUI (クリックで拡大) |
Santa FeのGUI (クリックで拡大) |
Maximは、お客様の利便性を高め、短い時間で確実な設計ができるように、非常に質の高いリファレンスデザインを提供しているが、評価ボードを提供しても意外に評価が大変で時間もかかることに着目した。これに対し、必要な機能やインタフェース、そしてソフトウェアをキットにし、PCにつなぐだけですぐに評価ができるソリューションを開発し提供するに至った。設計ばかりか評価についても迅速に進められることの貢献度が非常に高いことは、設計者であれば容易に理解できると思う。 |
現在Santa Feに関してのみキットの用意があるが、今後このコンセプトは他にも展開する方向にあるとのこと。これは、リファレンスデザインの進化として、一歩抜きん出たアプローチであるといえる。 |